読売ジャイアンツ
INTERVIEW
株式会社読売巨人軍 取締役会長
久保博
INTERVIEWER
フィールドマネジメント代表
並木裕太
――コンサルタントをはじめとするプロフェッショナル人材が、たとえばスポーツの業界に挑戦しようと考える時、その意欲とは裏腹に現実的には様々な障壁が立ちはだかります。自分のスキルを生かす場があるのか、待遇面はどうなのか……など、どうしても不安な思いが先に立つ。そこでフィールドマネージメントは、志ある方々のキャリアの開拓を支援するべく、新たな経営人材採用スキーム『STAY TRUE Sign UP』という仕組みにトライしています。今回は、日本を代表するプロスポーツチームである読売巨人軍の久保会長をお迎えして、球団はどんな経営課題を抱えているのか、コンサルタントのスキルを持った人材はその中でどんなバリューを発揮できるのか。そういったことをテーマに語り合っていただきたいと思います。
並木 久保さんは、読売新聞社スポーツ事業部長や読売巨人軍球団社長、そして同会長と、スポーツ分野のお仕事に長く携わってこられて、ビジネスを取り巻く環境の変化をお感じになりますか。
久保 この10年ほどの間に、スポーツの社会的・文化的価値がかなり高まり、それに付随して商業的な価値もついてきたと感じます。日本のプロスポーツは、もとをたどればアマチュア団体に端を発している競技が多く、関わっている人たちのボランティア精神で支えられてきた面は否めない。いまようやく、アマからプロへと明確に分離しようとしているのかもしれませんね。
特にライブコンテンツの価値が見直されている影響は強いと思います。会場をいかに満員にするかが、スポーツビジネスの根幹。生の試合を見に来る観客が増えている状況が、日本のスポーツビジネスの成長を後押ししているのではないでしょうか。
株式会社読売巨人軍 取締役会長 久保博
並木 満員の観客を集められるコンテンツとしての魅力をどう生かしてビジネスを拡大していくか。その手腕が問われる時代ですね。
久保 キーワードの一つが「夢」だと思います。たとえば家を売るにしても、昔は“機能性”を売っていましたけど、最近のCMを見ると“夢”を売っていますよね。家電にしてもそう。「夢」という付加価値をつけることで、モノが高く売れていく時代なのでしょう。
それは、日本の文化国家としての成熟度が増してきたということ。スポーツは生活必需品ではありませんが、人々の日常に夢を与え生活をより豊かなものにするという意味では必需品のような存在になりつつあると言える。そういった部分を意識してビジネスを展開することが重要なのだと思います。
並木 人々を熱狂させたり、宗教や人種の違いをも超えて一致団結させたりする力がスポーツにはありますね。
久保 おっしゃる通りです。2011年、テキサス州ダラスで開催されたスーパーボウルを現地観戦した時、全米から観客が集まる様子を見て「これは聖地巡礼なのだ」という印象を強く持ちました。アメリカに暮らす多様な人々が一つのスタジアムに集い、そこにいる誰もが一体感を味わえる。これはスポーツならではの力ですよ。
日本にも、巨人の本拠地である東京ドーム、阪神の甲子園といったように、野球にしかつくれない熱狂空間があります。そこに音楽や最新のデジタル技術を掛け合わせることで、また新しいスポーツの熱狂空間をつくる余地はある。そういう空間の持つ力を有効活用したスタジアムビジネスは、日本がアメリカに比べてまだまだ遅れているところの一つです。
並木 プロ野球やJリーグの事例を見ていても、球団・クラブがスタジアムそのものや管理運営権を手に入れることのビジネス的なメリットは大きいですね。そこにコンサルタント経験者のような外部人材が加わることによって、成長のスピードもより速まるのではないかと思います。
久保 スポーツビジネスに携わりたいと考える方は増えているのではないでしょうか。プロ野球でも、パ・リーグは多様な人材の活用に積極的ですよね。セ・リーグは球団の親会社に老舗が多いこともあってちょっと遅れをとっていますが、これからの時代に対応していくには外部人材の登用を進める必要性に迫られてくると思います。
実際、弊社もEコマースなどのIT部門に通じた人材に来てほしいという思いがありますし、スタジアムを保有している球団なら、チケッティングや試合運営、ブランディングなど、外部人材が力を発揮できる分野はいろいろとあるでしょう。
並木 ただコンサルや大手企業で仕事をしている人にとっては、スポーツの世界で働いてみたいという志はあっても、収入の面がネックになり、二の足を踏んでしまうことが多い。
久保 現状、収入の部分でギャップがあることは事実ですよね。先ほど申し上げた通り、アマチュア的なボランティア精神で成り立ってきた世界なので、「スポーツが好きなんだから安い給料でもがんばれ」といった風潮があるのかもしれません。
「スポーツは夢ビジネスだ」と言いましたが、人間を元気にする、あるいは地域を元気にするところにスポーツの社会的な価値があるし、それは多くの人が「スポーツの世界で仕事をしたい」と考える魅力にもなっていると思います。そういう思いに応えられるように、しっかりと利益も出せるような収益構造にしていく必要がありますね。
並木 彼らが持っている価値をきちんと発揮できる環境さえ整えられれば、たとえばスタジアムビジネスの改革によって、大幅な増収は可能だと思います。収入面のギャップを解消して余りある成長を遂げることは十分にできる。
要は順番の問題ですよね。今回、私たちが用意した人材活用のシステムによって、コンサル経験者などが収入面の不安なくスポーツ界の仕事にチャレンジできることになる。それによってスポーツ企業の成長を待つのではなく、後押ししていこうという発想です。
久保さんが外部から採用してでも一緒に仕事をしたい人というのは、どういう人材でしょうか。
久保 スポーツ界のことだけを知っている人よりも、スポーツ以外の世界をよく知っている人と一緒にやってみたい思いはあります。私は美術が好きなんですが、美術関係者と話をしているとやっぱり楽しくて、「プロ野球とどうにかして結びつかないかな」といつも考えるんです。
特に若い時は、自分のやっていることが役に立つかどうかを考える必要はあまりないと思う。自分の専門以外の領域、メシを食う以外の領域をどれだけ持っておけるか。それはスポーツビジネスのような「夢」をつくる仕事に携わるようになった時に、すごく生きてくると思います。
並木 なるほど。巨人はこのところ、いろいろなコラボレーションを実現させていますし、そういう部分で多分野の知識やスキルが活用できるのかもしれませんね。
久保 そうですね。直近の代表的な事例を挙げれば、「ももいろクローバーZ」とのコラボが実現しました。ももクロのライブに巨人の元選手が出演し、ももクロのメンバーには東京ドームに来てもらって試合前に観客の前でパフォーマンスをしてもらった。ももクロカラーを取り入れたユニフォームも販売して大好評でした。
平日ナイターの東京ドームは満員になるのがだいたい19時過ぎですが、試合前にそうしたイベントを企画すると、16時、17時の時点でびっくりするくらいお客さんが入る。これまで野球に接してこなかった人たちに観戦の機会を与えるという点では大きな意味があると感じています。
並木 まさに音楽業界とのコラボの成功例ですね。鳥栖のスタジアムに東方神起が来た今年(2018年)のJリーグ開幕戦では、初めてJリーグの試合を生で見た観客数が普段よりもかなり多かったという調査結果が出たそうです。スタジアムを、試合を見るためだけの場所にしておく時代ではないですよね。
久保 エンターテインメント性をいかに持たせるか。ここ数年の間に、プロ野球もそういう部分に目を向けるようになりました。広島がいい例ですが、試合の結果うんぬんというよりも、スタジアムに行ってその空間自体を楽しむ人が増えてきました。
並木 巨人の経営面での課題はどのあたりにあるのでしょうか。
久保 グッズ販売は大きな課題の一つだと考えています。自前の売り場を持っていないこと、それからロイヤリティビジネスとして展開していることもあって、グッズを自社開発している他球団に比べると利益率はどうしても低くなる。
グッズはファンと選手、ファンとチームをつなげる大事なものですし、巨人の伝統やブランド力、それこそ「夢」という付加価値をつけた商品をどうつくっていくか、試行錯誤しているところです。この分野でも外部人材の必要性を感じています。
並木 歴史のあるプロ野球も、ビジネスとしてはまだまだ成長の余地があるということですね。そして、スポーツビジネスの可能性に目が向けられるようになったいまこそ、他分野でスキルを培ってきた人材が活躍する時なのだと思います。
スタジアムビジネス、IT、グッズ、ブランディングなど、外部人材のサポートが必要な領域は多岐にわたり、ハードルが高そうに感じられる巨人という球団にも、コンサルタントをはじめとする外部のプロフェッショナルたちが活躍する場がある。スポーツの世界に挑戦したいという志を持っている人たちに、本サイトを通じて出会えることを楽しみにしています。
久保さん、ありがとうございました!
INTERVIEW
久保博
株式会社読売巨人軍 取締役会長
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