SPORTS

J.LEAGUE

INTERVIEW

公益法人 日本プロサッカーリーグ

チェアマン 村井満 専務理事 木村正明

INTERVIEWER

フィールドマネージメント代表

並木裕太

――新年、明けましておめでとうございます。2018年12月、株式会社フィールドマネージメント(以下FM)は、スポーツ界などに経営人材を呼び込むべく、両者をマッチングする新たな採用サイト「STAY TRUE Sign UP」を開設しました。今回は、Jリーグの村井満チェアマンと木村正明専務理事にご同席いただき、日本のサッカー界、スポーツ界の人材に関する問題意識や今後のあるべき姿などについて、意見を交わしていただけたらと思っています。

村井 本年もどうぞよろしくお願いします。並木さんがスポーツ界の人材採用に注目したのはどういう経緯だったんですか?

並木 浦和レッズの淵田敬三社長と交わした会話が最初のきっかけでした。淵田さんは三菱自動車に在籍されていた時、コンサルティングファームを使った経験があって、その仕事ぶりを好意的に見ていたそうです。レッズの社長に就任して、「ああいう人材がほしいな」と考えるようになった。ただ、コンサルファームを使うことは予算的に難しいので、「給料が下がってもいいから大好きなレッズで働きたいです!」と言ってくれるような人が現れるのを待っていた、と。
実際、そういう人材が運よく一人、入ってくれたそうですが、コンサルファームで仮にマネージャーまでやったとしても年齢は20代後半くらい。クラブに入るといっきに若手になってしまって、事業の意思決定になかなか関わらせてもらえない。


村井満チェアマン

村井 あまりにバックグラウンドが異なると、もともとクラブにいるスタッフに受け入れてもらいにくいところもあったかもしれませんね。

並木ええ。待遇面で我慢していることに加えて、そうした不満も募るようになり、結局数年で辞めていってしまったそうです。その話を聞いた時から、何かうまい仕組みはないのかなと考えるようになりました。
これは仮定の数字ですが、その辞めてしまった彼にレッズが支払っていた人件費が年間500万円だったとします。彼がクラブを去ったことを受けて、淵田さんから私のところへ「この500万円の予算で、レッズがよくなるためのプロジェクトを何かしてくれないか」といったお話がありました。その時ちょうど、「サッカーの仕事ができるなら転職したい」と言っている外資ファームの若手コンサルタントを知っていたので、彼にレッズで働いてもらうのはどうかという考えが浮かびました。ただ、やはり給料の問題があって、コンサルとしてたとえば800万円の収入がある彼が、レッズに行くと500万円になってしまう。それによって、彼が転職をあきらめたり、レッズがいい人材を逃すことはすごくもったいない。誰かが我慢しなければならないなら、うちが我慢すればいいのではないかと思ったんです。つまり、まずはFMに就職してもらい、800万円の給料を払う。そのうえでレッズに出向してもらう。レッズは業務委託費として500万円の予算を使うスキームです。

村井 すると、FMが実質的に差額の300万円を負担する形になりますね。

並木 そういうことになります。そうやってレッズでの仕事を得たAさんは、マーケティングをがんばって、ある試合ではクラブの予想よりも約3000人も多くの観客を集めることに成功したり、期待どおりの活躍を見せてくれています。スポーツ界への道を用意してあげて、とにかくまずは入ってみてもらう。培ったスキルと意欲のある若者たちなら、必ず結果を出してくれると確信しています。

木村 でも、FMとしてのメリットはどこにあるんです?


木村正明専務理事

並木 たとえば「グッズ部門でも改善の余地がありそう」だとか「システムの導入で壁にぶつかっています」といった組織の中の課題を拾うことで、次のビジネスにつながったり。もっと大きな視点で言えば、スポーツビジネスの規模拡大に貢献することで、スポーツ関連のプロジェクトを多く手がけているうちにもいつかは返ってくるんじゃないかと思っています。シーズンオフには、FMの別のスポーツ関連の顧客、例えば野球などのプロジェクトに関わってもらうことも不可能ではないし、そうすることで300万円の負担は実質的には限りなくゼロに近づくと考えています。
よりリアルなことを言うと、レッズの仕事がなければ先ほどのAさんはFMに入社することはなかったと思うんです。刺激や魅力に富んだスポーツの仕事を用意できるようになることで、FMが優秀な若手にめぐり会える可能性が高くなる。そういう期待感もありますね。
ただ、「スポーツ分野で自分のスキルを生かしたいけど、どうやって入ればいいのかわからない」「給料の面で不安がある」という若者の背中を押したいし、それによって日本のスポーツ界がビジネスとしても育っていくことに貢献したいという思いがいちばんのモチベーションです。

村井 非常に共感できる、いい取り組みだと思います。スポーツ界は独特の構造があって、人材の面で難しい問題を抱えている。一つにはクラブなどの組織が縦割りになりやすいこと。少数で複数の業務を担うシーンも多く、ある領域に関するノウハウやナレッジが特定の人に留まってしまい、いわゆるタコツボ化する傾向もあります。それゆえに、ポテンシャルのある人材がいたとしても、スポーツ全体、クラブ全体を俯瞰して戦略を考えられる人材の育成が進まないといった悪循環があるように思います。
FMのような中立的な立場が介在し、ビッグクラブでの仕事を経験した、J3の市民クラブも経験した、という幅広いスポーツキャリアを持つ人材を生みだせる仕組みがあれば、その人材をまた別のクラブに送り出していくことも可能になる。こうした人材プールと複合的なマッチング機能を提供する存在は、Jリーグに限らず、さまざまなスポーツ団体で活躍する人材を育てることにつながるような気がします。
ファジアーノ岡山で長く社長を務められた木村専務はよくわかると思いますが、地方の給与水準と、東京を中心としたコンサルの給与水準の間ではどうしてもミスマッチが起こりがち。そのギャップを是正する仕組みがあるのは大きいですよね。

木村 そうですね。先日もクラブの社長が集まる機会があって、「何が大変ですか?」と聞いたら、いちばん多かった答えが社員の給与問題でした。村井さんの仰るとおり、地域の相場がある、というお話も伺ったことはあります。
ただ、クラブの職員はたいてい20~30名、多いクラブで50名程度ですから、一人ひとりのパフォーマンスを上げ続けなければならないことは変わりません。外部から来た人材如何に関わらず、リーグ全体のエコシステムとして、仕事で結果を出せる人には、きちんと禄で報いていく形にしないといけないと思いますね。

村井 並木さんが考案した採用の仕組みというのは、まずはFMに就職してから、クラブなどに出向するというイメージですか?

並木 あまり形にはこだわっていないです。働き手とクラブが考える給与水準に大きな開きがなければ、直接そのクラブに就職することも選択肢になるでしょう。
人によっては、給与というより「働き方」がネックになる可能性もあると思います。「家業の手伝いもしたい」とか、「いまやっている仕事は副業も認められている」といった人材には、たとえば業務委託契約で「Jリーグの仕事を週3日間だけ手伝ってください」という関わり方を用意するのもいいと思います。

村井 たしかに、Jリーグの場合は土日が試合で、月曜日に休みが設定されたりと変則的ですから、月~金曜日の常用雇用を前提にする必要はないかもしれませんね。極論すると、週のうち3日間はAクラブ、残り2日間は別のスポーツチームのために時間を使うとなっても成立しそうです。個人事業主型のハイパフォーマーにワークシェアリングという形で来てもらう、というのはスポーツ界に人材を呼び込むための一つの方策なのかもしれません。
実際、地域クラブで仕事をすることは、コンサルタントとしても大きなメリットがある。地元の名士や有力企業、行政など、顧客接点が非常に多いんです。そういう部分に魅力を感じてもらえるといいですね。

並木 現実問題として、Jリーグや各クラブにおける経営人材のニーズはどの程度ありそうですか?

木村 リーグの立場としては、デジタルマーケティングへの投資を厚くしていく方針の中で、(QRコードを活用したシステム)「Jリーグチケット」であったり、グッズ購入者への顧客IDの付与だったり、それらのデータをクラブと一緒に成果に結びつけられるような人材は欲しているところですね。

村井 たとえばデジタル開発人材を全54クラブそれぞれが抱えるというのは重複投資になってしまうし、それだけのボリュームを雇用吸収することは現実的ではない。だから一つには、デジタルマーケティングだったり、国際化、あるいはマーチャンダイジングといったファンクションを集約して、リーグがプラットフォームを構築し、それを各クラブに使ってもらうという考え方はありますよね。そう考えると、それをやるのがリーグなのか、FMなのかというくらいの違いしかないとも言える。
クラブが経営人材を一から育成しようと思っても、育成するフィールドを創出するところに難しさがありますから。

木村 たしかにそうですね。時流によってフォーカスすべき領域は変わってきます。一つのアイデアですが、リーグとして人材をプールして、複数のクラブを担当するような形のほうが、より機敏な対応ができるかもしれません。

並木 なるほど。リーグシェアードサービスのような形ですね。

木村 ええ。クラブとしては、たとえばチケットセールスの強化というのは、なかなか踏み込みづらい領域なんです。理由は明確で、試合数が少ないので、年間パスやチケットセールス金額は、総売上における比率が低く、チケットセールスを置くのであればスポンサーセールスを置いた方が収益率が高い。よって専門人材が少ないんです。リーグが策定したチケットセールスに強い人材をプールしておくことができれば、大きく前進させることができるかもしれません。
それから、実はチーム強化の現場も、テクノロジーの進化でオンザピッチとオフザピッチの境がボーダレスになる中、分析であったり、適正な市場へ人材を流動させたり、彼らをマネジメントできる人材など、フットボール畑出身とは違った視点を持った人材が求められている感じがします。

並木 まさにそういう話を湘南ベルマーレの曺貴裁監督としたことがあります。何もビジネスだけじゃなくて、スカウティングや相手の戦術分析などは、統計学に長けた若者が得意なんじゃないかと。MLBでは、ヒューストン・アストロズなどのように、ビジネスマン出身のGMが手腕を発揮して強化に成功した事例もありますし、経営だけでなくチーム寄りの部門でスキルを生かせる人材を取り込んでいくことも検討する価値がありそうですね。

村井 先ほども言いましたが、クラブ組織におけるタコツボ化は問題で、Jリーグはそれらを解消するための俯瞰図を描きました。“だんご3兄弟”と呼んでいます。フットボールのいわゆる“現場”と、事業サイド、それにホームタウン活動といった社会連携を推進する部署とが、リソースを活用する段となるとコンフリクトを起こしがちな現状がある。例えばですが、事業サイドが現場に対し「スポンサーとの握手会、サイン会を開いてほしい」と頼むと、現場は「シーズン中だから出しづらい」と快くは出しづらいですよね。あるいは、ホームタウン活動をやろうとすると、「(お金を払ってくれている)スポンサーのほうを優先すべきではないか?」という声が出てもおかしくありません。3つの団子、タコツボ同士がコンフリクトしている状況を高い水準で同時に成立させながらどう打開するのか。こういうところにも、まだまだ改善の余地があるなと感じます。

並木 課題が多いぶんだけ、経営人材が力を発揮できるフィールドも多い。意志ある人にはぜひ立ち上がってほしいですね。

村井 いま私の手元にある組織図にはまだ空欄のところがある。具体的には、「toC(個人向け事業)」の戦略担当と「toB(法人向け事業)」の戦略担当、それからブランディングの戦略担当の3つ。現状、これがプライオリティナンバーワンです。経営企画やコンサルなどのキャリアがあって、組織内の各領域を横断的に俯瞰できる人材にめぐり会うことができればうれしいですね。
全54クラブに1人ずつでも経営スキルの高い人材が行きわたれば、Jリーグはすごく発展しますよ。スポーツ界の事情とコンサルタントの両方の事情を理解した並木さんが、コンサル人材に特化して供給するパイプラインを構築することの意味は大きいと思います。

並木 たしかに、Jリーグのクラブは「1人」がもたらしうるインパクトが大きい。クラブの社長やGMの候補生をリーグが育成する機能を持っておくのもいいですね。困った時はそこからどんどん人材を送り込めるような。

村井 そういうものが実現すれば、リーグは本当に変わる。リーグもクラブもやり残していることはまだまだあるので、能力ある若者たちにその“宝の山”をどんどん掘り起こしてもらえたらと思います。

並木 収入面やキャリア形成、あるいは働き方などの問題から二の足を踏んでいる若き経営人材の背中を押すことでJリーグの発展に貢献できれば、それに勝る喜びはありません。
村井さん、木村さん、貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!


2019年度より使用されるオフィシャルボール

 

INTERVIEW

チェアマン 村井満 専務理事 木村正明

公益法人 日本プロサッカーリーグ

 

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